サステナブルな農業の未来へ~甘夏ナツコの物語 vol.1

甘夏は柑橘の代表品種と言ってよいほど知名度が高く、甘酸っぱさとほろ苦さ、懐かしい味が特徴です。
こどもの頃、季節になると母がひと房ひと房皮をむいて冷蔵庫に入れておいてくれました。よく冷えた甘夏は学校帰りのおやつにピッタリで、タッパーを抱えてパクパク食べました。はちみつをかけて“味変”させるのも楽しみのひとつ。今思えば小田原っ子の贅沢なおやつのひとときだったのかもしれませんね。
時代は変わり、いまは「皮が剥きやすい」「持ち運びやすい」「甘い」柑橘が人気です。甘夏のように「皮をむくのに手間がかかる」「重たい」「酸味と苦みがある」柑橘の人気は下降線を辿っています。
昨今の甘夏は収穫されず木になり放し、朽ちて畑に落ちてしまうことが少なくありません。せっかく美味しく実っているのに、畑の肥やしとなっていく姿を見るのはしのびないものです。
「なんとかならないかねぇ…」そんな農家さんのお声を、昨年幾度となくいただきました。
そこで江之浦果樹園maruesuは甘夏たちをお預かりし、甘夏そのものを販売することに加えて、甘夏をおいしく加工して商品化することにしました。
50キロ、100キロ、200キロ、500キロ…。最終的に甘夏は1トン以上集まってきました。どう加工するのがよいか、甘夏を何個も食べて、何個も食べて、じっとみつめました。食べて、みつめて、食べて、みつめて…。そんなことを繰り返すうちにいとおしさを感じるようになりました。
「ナツコ、一緒にがんばろう」
気が付いたら私たちは甘夏のことを「ナツコ」と呼ぶようになっていました。
「もったいない」を「美味しい」に。
甘夏ナツコの物語のはじまりです。
<続く>